ちなみにロシアが北方領土問題でめちゃくちゃ強硬姿勢に出ていることは、あまり悲観的になる必要はない。
日本が絶対受け入れ不可能な条件を持ち出すのは、むしろ本気で話し合ってる証拠。話し合う気がなければ、最初から交渉のテーブルにつかない。また、経済的な利益だけを持ち逃げするつもりで話し合う作戦なら、こんな強硬姿勢ではなく、もっと甘い言葉で釣ってくる。
話し合いの冒頭でめちゃくちゃハードルを上げてくるのは、交渉を有利に決着させるための方便であり、それは本気で「決着させる意志」があるからだと見て取れる。おそらく、安倍内閣がまだしばらくは潰れないだろうと見込んで、決着させるなら今だと思ってるんだろう。
トランプがシリア撤退を決めたのも、主敵を中国と決めた以上、ロシアと争いたくないからだろう(まあトランプの意図を推し量るのは非常に難しいが)。北方領土問題がこれまで解決できなかったのは、米露が対立しているから、アメリカが日本とロシアの平和条約を妨害してきた側面が大きい。つまり米露関係が好転すれば日露関係も進めやすくなる。日露平和条約の阻害要因が薄れている今、ひとつのチャンスではある。
ロシアも経済的に苦しいから日本と平和条約を必要としている。もっと根本的には、ロシアも中国を恐れている。ロシア極東の人口が数百万なのに、国境を接する中国側の人口は1億数千万。しかも中国は、今でこそロシアの軍事力を必要としているから主張を引っ込めているが、ロシアの沿海州は本来中国領だという方針を持っている。実はロシアは、極東最大の都市ウラジオストクを中国に狙われていて、極東の人口を増やしたくてたまらないんだよね。だから極東の経済振興が必要。
この問題は、日本から一時的なカネを騙し取ることでは解決しない。継続的に経済関係を強化してこそ安定的に人口が増える。日本もロシアも、この機会に平和条約を結びたいのは共通する。ただ、条件で合意できるかどうかは別で、合意できない条件なら話し合いは決裂する。
だから北方領土問題の決着と平和条約の締結が実現するか否か、結果は全くもって未知数なんだけど、プーチンにもとにかく交渉をする意志があるのは確かだと思う。「日本は四島全部がロシア領だと認めろ。北方領土という呼び名も変えろ。カネを出せ。そして平和条約を結ぼう」って日本が見向きもしない話を本気で持ちかけるほどプーチンはバカではないよ。