僕は「絶対の境地」と「則天去私」はおそらく同じものじゃないかと思う。
そしてすごく分不相応な考えだけど、僕は世間より少しだけ、その境地に近いんじゃないかと思う。
一郎の目指す「絶対の境地にいる人」と「世間にいる平凡な人」の間には、一郎のように頭の良すぎる人の他にも、世間から押し出されてしまった人間が揺れ動いているように思う。
要するに、世間で言うところの無敵の人のこと。
気が狂ったと世間には認識されているであろう無敵の人だけど、僕は少し理解できる。要するに一郎が百合や向こうの山を「僕の所有だ」といったように、他人というものと自分、森羅万象との境目がなくなってしまうから、傷つけることに抵抗がないんだと思います(というか、傷つけることも自然に組み込まれてしまう)。心の動きもまた、全て自然なことだから。