そもそも時代を通しても同時代の世界を見ても、普遍的な価値なんてないんだよ。
今現在、絶対的に正しいとされるものも、100年後や200年後にどうなってるか分からない。
それが不変に見えるのは、現代の、それが正しいとされる社会に生きているからで、かつての西洋ではキリスト教が唯一絶対で不変の価値観だと信じられてきた。だからアメリカ先住民やアジアの宗教観を「未開」で、キリスト教に帰依させることが唯一の救済だと信じてきた。
人権や平等と言った現在絶対視される価値も、かつての「神」を超えるものなのかな。
共産主義では共産主義こそが人類の最終到達点で絶対的な正解だとするから、中国ではそれ以外の遺物を文化大革命で破壊し尽くした。それはイスラム過激派がイスラム教だけが唯一絶対の正義だからって古い石仏なんかをぶっ壊してるのと何ら変わらないんだよね。
そりゃ私も人権や平等を支持する。それだからと言って、価値観の異なった過去の遺産をぶっ壊すのは別のことだと思う。今、信じてる価値観だって永久不変じゃない。
だけどそういう哲学的な問題とは別に、その「正義」を商売にしてる人たちもいる。「人権」や「平等」を声高に叫んでる団体にも、純粋にそれを守ろうと真面目に活動してる人たちもいれば、それを売り物にして金を稼いだり政治的な勢力を伸ばそうとする不純な団体もある。そしてさらに面倒なことは、純粋な動機を持った人たちが不純な団体に煽られて、知らないうちに利用されることも多い。
いずれにしても、現代の正義のために人類の遺産を破壊するのはヒステリックな反応で、いつか後悔する時がくるだろうね。まあ演劇などは脚本が残っていれば復活できるのかもしれないけど、脚本だけで技の伝承が途絶えた場合に全てを元に戻せるのかどうか。中国も文化大革命で貴重な遺産を大量に破壊してしまったことを後悔してる。一方、戦争に負けた中華民国がいろんなものを台湾に運んで保管してるから、大陸にはないものがいろいろ台湾にある。