マウスに「ボタンを押すと快楽が得られる装置」をある期間つけると、その装置を外してもボタンを押し続けるようになる
これは行動の動機付けが「報酬に対する反応」にとどまらず「報酬を得るための行動そのもの」にも伴っていることを示す実験であり、「依存」の研究で頻繁に引かれる逸話である
これを人の文芸鑑賞に当てはめて考えてみる
鑑賞者がアーティストの作品にある期間感動し続けると、たとえ晩年に以前のような質の作品を創出できなくなっても(極論、死後にすら)鑑賞者はアーティストを支持しつづける
これは鑑賞者が「作品を創出する能力に感動すること」ではなく、「アーティストの作品を鑑賞することそれ自体」を報酬として受けとるよう動機付けられてしまったからだと考えられる
このとき、鑑賞者が作者に「才能」や「権威」を覚える権威化、神聖化の仕組みは、実際には依存と同じなのではないか