JAL123便の事故で「圧力隔壁説」を否定してる動画がいろいろあるんだけど、すごく細かい検証をしていながら1つものすごく基本的なことを見落としてる気がしてしようがない。検証が細かいから、かえって見落とすのか。
当時のボイスレコーダーはエンドレステープ(市販のカセットテープみたいなチャチなものではないはずだけど原理は同じ磁気テープ)に記録されていた。そして当時のテープの回転速度にはムラがあるので、秒単位かせいぜい0.1秒単位レベルでの時間は計算できるかもしれないが、0.01秒単位での正確さは全く保証されていない。
また、ボイスレコーダーの元本は事故原因の究明に使われるものだから当時の最高級品を使っているだろうが、巷に流出しているテープは市販の普通のものでしかない。
市販のテープは、録音時には録音ヘッドと再生ヘッドの両方が降りて磁気テープに加圧するのに対し、再生時には再生ヘッドしか降りないので、摩擦が異なり、録音時のテープスピードと再生時のテープスピードに差が生じる。当然、録音時のほうが摩擦が大きいぶんテープスピードが遅くなるので、再生時のほうが若干速くテープが進む。
さらに、エンドレスでない通常の市販のカセットテープの場合は1秒間にテープが2.4cm進むという規格があるものの、あくまでこれは平均値の話。テープの回転軸は2つあるが、自動車にたとえると「前輪駆動」で後輪はただ付いているだけという構造のため、最初から最後まで一定速度でテープが動いているわけではない。市販のカセットテープは、機器の状態の差も含めてこうした録音・再生スピードの不正確性を考慮して、60分テープや90分テープなど、表記されている時間数よりも数秒程度テープを長く作ってある。
流出しているテープは何者かが原本をダビングしたものだが、テープのダビングは、一方で元のテープを再生しながら他方で同時に録音を行うので、再生デッキと録音デッキの状態の差も加わって、元本の正確なコピーではない。そうやって作ったテープを0.01秒単位で計測しても無意味な数値しか得られないんだが。
航空機の構造とか私には分からんけど流出したボイスレコーダーをアテにしすぎるのは違うと思う。機長だって緊急事態で必死に行動してるんだからアナウンサーみたいに正確な発音で喋ってたわけじゃなし。細かい音声解析で「ここの発音にはこういう音が含まれてる」と言ったって普段ですら人間の発音はさほど正確じゃないし咄嗟に口ごもったりするんだもんね。
つまり、「もともと不正確な録音テープ」を「正確無比に検証」してどうなるのかってこと。