「大斗小斗」のお話
むかしむかしある国に、とても権力欲の強い大臣がいました。大臣は、国民から税金を取るときには小さな斗(ます)で米の量をはかり、国民に米を支給するときには、大きな斗を使って量をはかりました。
同じ1斗、10斗、100斗でも、国民にとっては、取られる時は少なくてすみ、配られる時はたくさんもらえるので、大喜びしてその大臣を支持し、絶賛しました。
そのかわり、いつの間にか国はどんどん貧しくなり、国力も、王さまの力も衰えていきました。それを見て大臣は、民衆の支持を背景にクーデターを起こし、王家を滅ぼして、自分が新しい王になりました。「庶民思いのやさしい大臣」を演じていたのは、国を乗っ取るための準備だったのです…。
中国、春秋時代末期の斉のお話。
斉は太公望呂尚(姜子牙)の立てた国で、代々呂氏が君主だったが、楚から亡命してきて重臣になった田(でん)氏に乗っ取られた。実際には田氏は1人ではなく数代かけて呂氏の権力を奪っていった。
「春秋戦国時代」とひとまとめにされることも多いが、春秋時代と戦国時代の境界線は、姫氏の大国「晋」が、韓氏・魏氏・趙氏の3家に乗っ取られて分裂した事件で区分されることが多い一方、田氏が呂氏の斉を乗っ取った事件で区分されることもある。