日本のタンカーを攻撃したのは何者か、目的は何か、の個人的見解
(興味ある人だけ見てね)
①ハメネイ師の指示ではない
イランの最高指導者ハメネイ師は外国の首脳とあまり会わない。今回、安倍総理と会談しただけでも、日本との関係を重視している証拠である。イランにとって日本は伝統的な友好国だから、ハメネイ師はトランプ大統領と話し合うつもりが無くても、安倍総理の顔を立てて会談に応じた。その状況下で、ハメネイ師が日本のタンカー攻撃を首謀する理由は全くないし、矛盾が大きすぎる。
②イラン軍が関与していないとは言い切れない
イランは日本とは伝統的友好国だが、アメリカとは敵対している。アメリカは旧パーレビ王朝とは友好関係にあったが、イラン革命後、ホメイニ師と鋭く対立し、イラン・イラク戦争でもイラクの肩を持った。しかも今回、イランとの原子力協定を一方的に破ったのはアメリカのほうで、今の両国対立の責任はトランプ政権側にある。
それだけに、イランには「アメリカと和解なんかできるか」と憤慨する人が多い。安倍総理はその「和解の使者」として訪れたのだから、イラン軍の強硬派が、和解を壊すために暴走した可能性がある。だとすれば、イラン国内は穏健派と強硬派の対立が想像以上に激しく、ハメネイ師ですらコントロールできない部分があることになる。
③イランの反政府勢力の可能性
もしも安倍総理の仲介が成功したら、アメリカによる制裁が解除され、イラン経済が好転することになる。そうすればハメネイ師や、現政権のロウハニ大統領の権力が増すことになる。反政府勢力にとってはそれでは困るので、安倍総理の仲介を失敗させることを通して、現政権の外交を失敗させて国内の混乱・対立に拍車をかける目的で攻撃した可能性がある。
④イラン以外の勢力の可能性
もしもアメリカがイランと和解した場合、特に困る国が2つある。ひとつはイスラエル。イスラエルと中東イスラム諸国との対立は今さら語るまでもないが、反イスラエルの急先鋒がイランなので(イランが核兵器を作るなら標的はまずイスラエル)、イスラエルにとしては、アメリカがイランを潰してくれることを望む。
もうひとつは、サウジアラビア。アメリカと中国が「世界の覇権」を争っているとすれば、サウジアラビアとイランは「中東イスラム諸国の覇権」を争っている。理屈の上ではイスラエルが宿敵のはずのアラブ諸国の中で、サウジアラビアはあえて親米主義、イスラエルとも対立しない方針で、アメリカの支持を受けて中東地域のリーダーをつとめてきた。それが最近トルコとの関係でアメリカと不協和音を起こし、イランの勢力拡大で中東の覇権国としての地位が危なくなっている。アメリカとイランが険悪になってくれれば助かるのは、サウジアラビアも同じ。
とはいえ、イスラエル、サウジアラビアとも、「日本の」タンカーを襲う動機は薄い。どちらも、日本と険悪になることを望んではいないからだ。そもそも両国ともアメリカとの親密な関係を望んでいるのに、トランプ大統領の外交をあからさまに妨害することの逆効果を恐れるはずで、「親米・反イラン」国の行動とは思えない。
⑤トランプ大統領いわく「イランがやった」の真意
ハメネイ師とロウハニ政権に、アメリカと対話する意志がないとなれば、トランプ政権は圧力強化に出る。その大義名分を得るためには、イランが悪事をやったことにしたい。
とはいえ、国内・国外に敵だらけのトランプ大統領にとって安倍総理は数少ない味方であり、わざわざ安倍総理の仲介を失敗させて(安倍総理に仲介を頼んだのはトランプなのに)、安倍政権の弱体化を招くようなことをトランプ大統領がやる動機がない。そんな中で「イランがやった」と言うなら、イランが無関係とは考えにくい。
⑥トランプ大統領の情報源は正確か
実はこれも疑わしい。かつてCIAが「フセインが大量破壊兵器を持っている」というガセネタをブッシュ大統領に吹き込んだように、トランプ大統領の情報源も事実を伝えていない可能性がある。アメリカ国内の「反トランプ派」なら、トランプ大統領を、その基盤強化に貢献している安倍総理もろとも失脚させようと企んでもおかしくない。また、トランプ大統領の失脚を望まない側近にしても、イランとの和解を極度に嫌えば(たとえばボルトン大統領補佐官のような)、不正確な情報を伝える可能性がある。
⑦結論
ハメネイ師、ロウハニ大統領の指示ではないだろう。イラン軍の一部強硬派、またはイランの反政府勢力がやった可能性が高い。後者の場合はアメリカの反トランプ勢力、または対イラン超強硬勢力が、イランの国家的陰謀のように誤情報をトランプ大統領に伝えている可能性もある。