穣かなる大地

作者名:ルッフン。

春香はある冬の学校からの帰り道に、いつもの日課として近所にある山の中に入った。
......
近くで小川が流れている音が聞こえる。
鳥の囀りが聞こえる。
そして、暖かな木漏れ日が私の躰に降り注いでくる。
一歩、一歩凸凹とした地面に対し、滑って転ばないよう、確かに足を踏み締めて私は山の中を歩いて行く。
針葉樹が見渡す限り生えている。
下を向けば、針葉樹から落ちた枯れ葉が土と同化し、切り取られ落ちている枝には苔が生えている。
倒れた木の幹にはシダ植物のようなものが生えて、太い木の根本にはサルノコシカケが瘤のように出ている。
そして、空を見上げると所々葉っぱがない部分が見受けられ、枝が青々とした初夏に比べ、より露出している。
見て解る通り、ここはあまり人の手が及んでいない、最低限の管理が行われている山の中だ。
もう季節は冬で、土には枯れた葉っぱ、松ぼっくりといったものが落ちている。
私は、ふと、近くにある松の木の幹を触ることにした。
手が悴んでしまうのでつけた、毛糸の手袋の上からでも解るぐらい、ひび深く割れた松の木の幹。
松の木の幹を抱きかかえたくなったが、太くて手と手同士が届かない。
この松の木の樹齢は一体何年ぐらいだろうか。
少なくとも数十年、いや生えてから半世紀程度は経っているだろう。
見上げると、幹から分かれていった枝に大量の葉っぱが付いている。
辺りを見回すと、所々はすでに枯れ果てた木がある冬でも、松みたいな常緑樹は蒼色の葉っぱを沢山つけている。
「この葉っぱの中に潜り込んだら暖かいだろうなぁ」
そう呟きながら上を見上げると、雄々しく屹立している松の木は冬の針のように吹いてくる凩に揺られて、葉っぱを何枚か落としていた。
その落ちてくる葉っぱを目で追いかけていると、やがて葉っぱは土の上に落ちていった。
私は座って、柔らかい土を肉眼で観察していると、どこかで聞いた話を私は思い出した。