1.入塾

2021/05/16 07:25:52

きっかけは中1の夏だった。

PRRRRR…
ある日の夜、私、奥野 美優のスマホから着信音が流れた。画面には「夏紀」と私の親友の名前が表示されていた。
「…もしもし」
応答ボタンを押してそう言うと、明るい声が聞こえてきた。
「あ、美優?いきなり電話してごめんね~。実はね…」
夏紀は話し始める。

今、夏紀の通っている塾では「友達·兄弟紹介キャンペーン」というキャンペーンをやっていて、友達や兄弟に塾を紹介して、紹介された人が入塾すると、紹介された人とした人2人とも、図書カード1000円分がもらえるらしい。

「…ってわけで、美優にも慶應アカデミーに入ってほしいんだけど、どうかな?授業は分かりやすいし、月謝もそんなに高くないよ」
そう言う夏紀は、まるでセールスマンのようだった。
「うーん、でもなぁ…」
「美優、入ってみたら?」

私達が話しているとき、私のお母さんが入ってきた。
「ほら、美優最近テストの成績下がりぎみだし、2年後には高校受験もあるじゃない。それに、慶應アカデミーは評判が良い上に夏紀ちゃんもいるし。お互い切磋琢磨できそうじゃない?だから、お母さんは美優が塾に通ってほしいわ」
確かに言われて見ればそうだった。クラスメイトはみんな塾に通っていて、通っていないのは私と菊池さんだけだった。お母さんの言う通り、成績が下がりぎみだから、このままだとテストの成績最下位の可能性も0ではない。そのためには、塾に通った方が良いかもしれない。

「…わかった、私、入るよ」
私がそう言うと、
「うわぁぁぁん、嬉しすぎるーーー!!!親友と一緒の塾に通えるとか、嬉しすぎるーーー!!!」
スマホ越しに、夏紀の歓声が聞こえた。

次の日、私は慶應アカデミーに体験に行った。その後、お母さんに手続きをしてもらって、入塾が決まった。
一番嬉しかったのは、夏紀とクラスが一緒で、しかも隣の席だった事だ。
ここなら、成績が上がりそうだし、夏紀との絆も深められそう。

―――この時は、まさか私があんな目に遭うとは気づいてもいなかった。