episode1-リゾット

2020/01/19 07:26:59

 午後6時、無機質な要塞のような建物の前。
 俺は部屋の窓から外を眺めていた。
 黒いマントを纏った男らが、白い布を被った女を囲って歩いている。
 女は、男らに手を握られ、抵抗しながら彼らと進み歩いていた。
帝「ようやく来たか・・・」
 彼らは俺の部屋に彼女を連れ込んだ。
男「帝、連れて参りました」
帝「どうだ。見せろ」
 男らは、彼女が被っていた布を取った。
 すると、牙のある肌も髪も真っ白な女が現れた。女は真っ赤な目から涙を流し、俺を睨みつけて歩いていた。
帝「これが・・神喰白・・・」
 神喰白は『ピューパ』と呼ばれる生き物だった。『ピューパ』とは、人間になりきれなかった動物で、20万人に一人の確率で産まれてくる。遺伝的なものではなく、母親や父親が普通の人間の場合でも産まれてくる場合がほとんどで、母親や父親がピューパであっても子供に遺伝することはほぼない。肌は真っ白で、髪や睫毛、眉毛などの体毛も真っ白だった。アルビノのように見えるが、牙もあり、人間よりも身体能力も高い。
 俺は人間やピューパなどの生き物が共生するこの澪標学院のトップとして17年生きてきて、ピューパを何度も見てきたが、彼女は別格だった。肌や体毛がいっそう白いというだけでなく、彼女は美形だった。だからより魅力を感じられる。触れたら一瞬で雪のように溶けてしまいそうで、繊細で、煌びやかで、なんともいえない美しさだった。
 俺は彼女を椅子に座らせ、彼女の髪の毛をそっと撫でた。彼女はビクッと反応して怯えた。動物だからか、髪は柔らかく細くふわふわしていた。彼女は震えていた。震えながら泣いていた。唸り声をあげ、牙をむき出しにしながら泣いていた。当然のことだ。わけもわからずここに連れてこられたのだから。俺は彼女の髪の毛から手を放し、彼女の前にしゃがみ込み、問いかけた。
帝「神喰白か?」
女「は・・・はい・・・」
帝「そうか、白か。俺は瑞牆獅恩だ。お前を呼んだのは、お前に俺のリーベを救ってもらいたいからだ」
白「・・・?」
帝(以下獅恩)「俺のリーベは不治の病に侵されているんだ。治療法はなく、悪化を防ぐ以外に方法はなかった。だが、お前なら治せると聞いたんだ」
白「わたし、病気の治し方なんて・・・」
獅恩「お前の血液や分泌液を体内に取り込むことで、ウイルスを倒すことができるらしいんだ。勿論お礼は十二分に弾ませてもらう」
白「でも・・・家には小さい妹と弟がいて・・・」
獅恩「そうか・・・それは考えておく。とりあえずはお前と一緒にここに住んでもらうかもしれない」
白「それなら安心ですが・・・」
獅恩「嫌だよな、体の血を抜かれて、いつまでやらなきゃいけないのか分からないなんて」
白「・・・当然」
獅恩「でも、お前だからできることなんだ。お前だけが救えるんだ。協力してくれ。苦労はさせない。尊重する。頼む・・・。」
 白は少し複雑な顔をしたが、こくりと頷いた。
獅恩「そして俺のリーベなんだが・・・実は・・・」